首をかしげたくなる外国人雇用制限政策の発表
マレーシア政府は、外国人労働者の雇用について、3分野に限定すると、突如発表した。
本当にびっくりするが、外国人労働者に引き続き解放される3つの分野は、建設、農業、プランテーションだけになるそうだ。
現在、マレーシアにおける、外国人労働者数は、約2百万人だそうだ。
その内、建設、農業、プランテーションの3分野が占める割合は、わずか40%に過ぎない。
外国人労働者が一番多いのは、製造業が70万人で、その他、サービス業が31万人、家事従事者が13万人などとなっている。
この新しい政策が出た背景は、コロナ問題による失業率の上昇(5.3%)があるようだ。
つまり、政府の意図は、外国人労働者を排除し、マレーシア人の雇用を増やそうというものだ。
早速、製造業を中心に強い反発がでて、この政策を発表した翌日には、一挙に変えろということではなく、長期的に減らしていくようにと修正したようだ。
しかに、いかに環境が変化したとはいえ、これまで、高い経済成長に利用してきた外国人労働者を突如排斥し、マレーシア人の雇用増加につなげようとするのは、あまりにも乱暴ではないか。
そもそも、何故、外国人労働者が増えてきたのだろうか。
製造業の場合は、明らかに、ブミプトゥラ政策と人件費の上昇だと思う。
マレーシアは、他の東南アジア諸国に比べて、いち早く工業化が進んだ。
しかし、労働集約型の製造業はすぐに人件費コストの上昇に耐えられず、インドネシアとかタイへ移転していった。
そこで、マハティールさんの工業化政策により、自動車部品、電子部品などの高付加価値型の製造業へ転換し成功した。
それでも、これらの企業でも、マレーシア人より、コストが低く、安定的に供給される外国人労働者に頼っているのが現実せある
サービス業も、家事手伝いも、マレーシア人には成り手がいない。
ブミプトゥラ政策により、マレーシア人自身も、官公庁や政府系企業に就職するケースが多く、製造業やいわゆる3Kと言われる業種を敬遠してきた。
こういった背景がある中で、突然、外国人労働者は使用するな、マレーシア人を使えと言われても、そう簡単にはいかないだろう。
まず、マレーシア人が、そういった給与水準の低い現場労働者として働くのか、使用者側も、直接コストの上昇につながるマレーシア人を使って利益を確保できるのか。
将来、将来経済状況が回復したとしたら、マレーシア人はより条件の良い業種へ転職していく可能性が高いのではないか。
製造業も、ある程度熟練した労働者が確保が必要であり、将来、マレーシア人労働者の流動化が激しければ、経営そのものが成り立たなくなる。
このような、労働政策の根幹にかかわる、突然の政策変更は、あまりにも場当たり的で人気取り政策だ。
今の政権は、次の選挙を意識して、自分たちの支持層であるマレー人向け人気取り政策を今後も乱発するのではないかと危惧する。